SES契約とは?請負・派遣との違いやメリット・デメリットをわかりやすく解説
2025.9.04

SES契約とは、エンジニアの技術力を一定期間提供する「準委任契約」の一種であり、IT業界で広く活用されています。
この記事では、請負契約・派遣契約との違いや、メリット・デメリット、契約時の注意点までをわかりやすく解説します。
目次
SES契約とは?IT業界における重要な契約形態

SES(System Engineering Service)契約は、エンジニアの技術力を一定期間提供する契約です。成果物の納品を目的とするのではなく、エンジニアのスキルや労働時間に対して報酬が支払われます。
法的には「準委任契約」に分類され、エンジニアは善管注意義務(善良な管理者の注意義務)を持って業務を遂行しますが、成果物の完成責任は負いません。この点が、成果物の完成を目的とする「請負契約」との大きな違いです。
請負契約・派遣契約との比較
SES契約を理解するうえで、請負契約と派遣契約との違いを明確に把握することは不可欠です。特に「指揮命令権の所在」と「成果物に対する責任」が、これらの契約を区別する重要なポイントになります。
成果物の完成義務で分かれる「請負契約」との違い
請負契約は、仕事の「完成」を目的とする契約です。 受注者は、契約内容通りの成果物を納期までに完成させ、納品する義務を負います。
これに対し、SES契約(準委任契約)では、エンジニアの労働力を提供することが目的であり、成果物の完成は義務ではありません。この違いを表でまとめると以下のようになります。
契約形態 | 報酬の対象 | 完成義務 | 指揮命令権 |
---|---|---|---|
SES契約(準委任契約) | 労働時間・労働力 | なし | 受注者(SES企業) |
派遣契約 | 労働時間 | なし | 発注者(派遣先企業) |
請負契約 | 成果物 | あり | 受注者 |
指揮命令権の所在が異なる「派遣契約」との違い
派遣契約もSES契約と同様に、エンジニアの労働力を提供する契約ですが、最も大きな違いは「指揮命令権」の所在です。 派遣契約の場合、派遣先企業(発注者)が派遣されたエンジニアに対して、直接業務の指示を行うことができます。
一方、SES契約では、指揮命令権は受注者であるSES企業にあります。 発注者がSES契約のエンジニアに直接指示を出すことは原則としてできません。このルールを破ると、後述する「偽装請負」とみなされるリスクがあります。
参考:日本政策金融金庫 | With/Afterコロナに拡がる新たな人材活用トレンドSES契約を活用する3つのメリット

SES契約は、企業にとって柔軟なリソース活用を可能にするなど、多くのメリットがあります。ここでは主な3つのメリットについて解説します。
必要なスキルを持つ人材をすぐに確保できる
プロジェクトの立ち上げや、急な仕様変更で特定スキルを持つエンジニアが必要になった場合でも、SES契約を活用すれば迅速に対応できます。自社で採用活動を行うよりも短い期間で、必要なスキルセットを持つ人材をプロジェクトに投入することが可能です。
これにより、ビジネスチャンスを逃さず、プロジェクトを円滑に進めることができます。
人件費を柔軟に調整しやすい
SES契約は、エンジニアの労働時間に基づいて報酬が計算されるため、プロジェクトの繁閑に合わせて人件費をコントロールしやすいというメリットがあります。
例えば、プロジェクトの繁忙期には複数名のエンジニアと契約し、閑散期には契約人数を減らすといった柔軟な対応が可能です。これにより、固定費を抑えながら効率的な開発体制を構築できます。
業務遂行の自由度が高い
SES契約(準委任契約)は、請負契約と異なり、成果物の完成義務を負いません。そのため、仕様変更や要件の追加が発生しやすいアジャイル開発のようなプロジェクトに適しています。市場や顧客の反応を見ながら、柔軟に開発の方向性を調整していくことが可能です。
SES契約で注意すべき3つのデメリット

多くのメリットがある一方で、SES契約には注意すべきデメリットも存在します。契約後に後悔しないためにも、リスクを正しく理解しておきましょう。
成果物の完成が保証されない
SES契約は労働力の提供を目的としているため、契約期間内にプロジェクトが完了しなかったり、期待した成果物が得られなかったりする可能性があります。
エンジニアのスキルや生産性に問題があった場合でも、契約上は報酬を支払う義務があります。これを防ぐためには、契約前のスキル確認や、定期的な進捗管理が重要になります。
エンジニアのスキルが期待と異なる場合がある
SES企業から提案されたエンジニアのスキルが、プロジェクト要件と合致しないケースもあります。
経歴書だけでは判断しきれない部分もあるため、契約前にSES企業との面談を通じて、業務内容や必要スキルを共有し、適切な人材配置を依頼することが、ミスマッチを防ぐうえで効果的です。
帰属意識の低下や情報共有の課題がある
客先常駐で働くSESエンジニアは、所属するSES企業と常駐先企業のどちらにも完全には帰属しないという立場になりがちです。
そのため、帰属意識が低くなったり、常駐先の社内情報が十分に共有されず、業務に支障が出たりすることがあります。円滑なコミュニケーションを促す仕組みづくりや、チームの一員として受け入れる姿勢が求められます。
SES契約の料金相場はどのくらい?
SES契約の料金は、一般的に「人月単価(にんげつたんか)」という形で提示されます。これは、エンジニア1人が1ヶ月稼働した場合の費用を指し、様々な要因によって変動します。
エンジニアのスキルや経験年数が価格を左右する
最も大きな価格決定要因は、エンジニアのスキルレベルと経験年数です。
例えば、実務経験3年未満の若手エンジニアと、10年以上の経験を持つベテランエンジニアでは、単価に大きな差が出ます。SES企業が提案する人材の中から、プロジェクト要件に合ったスキルレベルのエンジニアを依頼することで、コストの最適化に繋がります。
担当業務や開発言語の専門性も影響する
担当する工程(上流工程か下流工程か)や、使用するプログラミング言語の需要と供給のバランスも単価に影響します。AIや機械学習といった最先端技術や、特定のフレームワークに関する高い専門性を持つエンジニアは、単価が高くなる傾向にあります。
以下は、スキルレベルに応じた料金相場の一般的な目安です。
スキルレベル | 経験年数の目安 | 月額単価の目安 | 主な役割 |
---|---|---|---|
ジュニア | 1〜3年 | 50万円〜70万円 | プログラマー、テスター |
ミドル | 3〜7年 | 70万円〜100万円 | 詳細設計、開発リーダー |
シニア | 7年以上 | 100万円〜150万円 | 要件定義、プロジェクト管理 |
SES契約の注意点
SES契約を成功させるためには、契約締結前の確認が極めて重要です。
特に以下の4つのポイントは、トラブルを未然に防ぐために必ず押さえておきましょう。
業務の範囲と内容を契約書で明確化する
SESエンジニアに依頼する業務の範囲、内容、役割を、契約書に可能な限り具体的に記載することが重要です。
「システム開発業務全般」のような曖昧な表記は避け、「〇〇システムの詳細設計業務」や「△△機能のプログラミング業務」のように、誰が読んでも解釈の齟齬が生まれないように明記しましょう。
指揮命令系統のルールを社内で徹底する
前述の通り、SES契約では発注者に指揮命令権はありません。 現場の社員がこのルールを理解せず、SESエンジニアに直接業務指示を出してしまうと「偽装請負」と判断されるリスクがあります。
業務の依頼や進捗確認は、必ずSES企業の担当者を通じて行うというルールを、社内全体で徹底する必要があります。
知的財産権の帰属先を確認する
SESエンジニアが開発過程で生み出した成果物(ソースコードや設計書など)の知的財産権が、どちらに帰属するのかを契約書で明確にしておく必要があります。 特段の定めがない場合、知的財産権は制作者であるSESエンジニア(またはSES企業)に帰属する可能性があります。
発注者側に権利を帰属させたい場合は、その旨を契約書に明記し、双方の合意を得ておくことが不可欠です。
「偽装請負」のリスクを正しく理解する
偽装請負とは、契約形式上は「請負」や「準委任(SES)」であるにもかかわらず、実態として「労働者派遣」に該当する状態を指します。
発注者がSESエンジニアに直接的な指揮命令を行うことが、その典型例です。 偽装請負と判断された場合、労働者派遣法などの法律に基づき、罰則が科される可能性があるため、細心の注意が必要です。
優良なSES企業を見分けるポイント

SES契約の成功は、パートナーとなるSES企業の選定に大きく左右されます。
信頼できる企業を見極めるために、以下の3つのポイントを押さえておきましょう。
豊富な取引実績と得意な技術領域を確認する
企業のウェブサイトなどで、これまでの取引実績や導入事例を確認しましょう。自社の業界や、依頼したいプロジェクトに近い実績が豊富であれば、スムーズな業務遂行が期待できます。
また、その企業が得意とする技術領域(Web系、インフラ系、業務系など)が自社のニーズと合致しているかも重要な判断基準です。
営業担当者の専門知識と提案力を見極める
営業担当者が、IT技術や業界動向について深い知識を持っているか、そして自社の課題を正しく理解し、的確な提案をしてくれるかを見極めましょう。単なる人材紹介にとどまらず、プロジェクト成功のためのパートナーとして信頼できるかどうかという視点で評価することが重要です。
所属エンジニアの教育制度やフォロー体制が充実している
所属するエンジニアに対して、どのような研修制度や資格取得支援制度を設けているかを確認することも重要です。エンジニアのスキルアップに投資している企業は、質の高い人材を育成する意識が高いと言えます。
また、エンジニアが常駐先で問題なく業務を遂行できるよう、定期的な面談などのフォロー体制が整っているかも確認しましょう。
まとめ
本記事では、SES契約の基本的な概念から、請負契約・派遣契約との違い、メリット・デメリット、そして契約時の注意点に至るまでを詳しく解説しました。
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