人件費の計算方法を完全解説|内訳・計算式・削減ポイントまでわかりやすく紹介

人件費は、企業経営における主要なコストのひとつであり、給与だけでなく、社会保険料や福利厚生費なども含まれます。そのため、正確な把握と管理が求められます。
本記事では、人件費の内訳、計算方法、経営指標、削減のコツまでをわかりやすく解説します。

目次

  1. 人件費とは?経営に欠かせない重要なコスト
  2. 初めてでも簡単!人件費の基本的な計算方法
  3. 自社の経営状況を把握する3つの重要指標
  4. 人件費を適正化するための具体的な方法
  5. 人件費計算でよくある質問
  6. まとめ

人件費とは?経営に欠かせない重要なコスト

人件費とは、企業が従業員を雇用することで発生するあらゆる費用の総称で、社会保険料の会社負担分や福利厚生費、退職金の積立なども含まれます。単に従業員に支払う給与や賞与だけを指すのではありません。
企業の利益を圧迫しないよう、また従業員の満足度を維持するためにも、人件費を正しく理解し、適切に管理することが経営の安定に不可欠です。

人件費に含まれる費用の内訳

人件費は、企業会計において複数の勘定科目に分類されます。どの費用が人件費にあたるのかを正確に把握することが、正しい計算の第一歩です。主な内訳は以下の通りです。

勘定科目 具体的な内容

給与・手当

従業員に支払われるすべての給与と手当
(基本給、残業手当、休日出勤手当、役職手当、住宅手当、通勤手当)

賞与

夏や冬のボーナスなど、定期給与とは別に支払われる一時金
(役員への賞与も含む)

法定福利費

法律で加入が義務付けられている社会保険料(健康保険、介護保険、厚生年金保険)、労働保険料(雇用保険、労災保険)の会社負担分

福利厚生費

法律上の義務はないものの、企業が任意で提供する福利厚生にかかる費用
社員旅行、健康診断、慶弔見舞金などが該当

退職金

従業員の退職時に支払われる退職一時金や、そのための積立金(退職給付引当金)

役員報酬

取締役や監査役などの役員に対して支払われる報酬

これらの項目をすべて合算したものが、企業の総人件費となります。

人件費と間違いやすい「労務費」との違い

人件費と混同されやすい言葉に「労務費」があります。この二つは明確に異なります。
労務費は、製造業などで製品の製造に直接関わった従業員に支払われる賃金や手当のみを指し、原価計算に用いられます。

一方で、人件費は、製造部門だけでなく、営業、事務、管理部門など、企業に属するすべての従業員に関する費用を含みます。つまり、労務費は人件費の一部に該当するため、両者の違いを理解しておくことが重要です。

初めてでも簡単!人件費の基本的な計算方法

人件費の全体像を掴んだところで、次は具体的な計算方法を見ていきましょう。
以下のステップに沿って計算することで、自社の総人件費を算出できます。

ステップ1: 全従業員への支払いを合計する

まず、従業員と役員に支払っているすべての金銭を合計します。これには、毎月の給与、各種手当、賞与(ボーナスなど)、役員報酬が含まれます。給与明細や賃金台帳を確認し、年間の支払総額を算出しましょう。パートやアルバイトに支払う給与(雑給)も忘れずに含める必要があります。

ステップ2: 会社負担の法定福利費を計算する

次に、人件費の中でも計算が複雑になりがちな「法定福利費」を算出します。これは、健康保険、介護保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険の保険料のうち、会社が負担する部分です。
保険料率は都道府県や事業内容によって異なるため、全国健康保険協会(協会けんぽ)や厚生労働省のウェブサイトで最新の料率を確認する必要があります。

保険の種類 会社負担分の計算方法(目安)

健康保険・介護保険

標準報酬月額 × 保険料率 × 50%

厚生年金保険

標準報酬月額 × 保険料率 × 50%

雇用保険

賃金総額 × 事業ごとの保険料率(会社負担分)

労災保険

賃金総額 × 事業ごとの保険料率(全額会社負担)

これらの計算は複雑なため、社会保険労務士などの専門家に相談するか、給与計算ソフトを活用することをおすすめします。

ステップ3: 退職金やその他の費用を加算する

最後に、退職金の積立金や、社員旅行、健康診断などの福利厚生費、採用活動にかかった費用、従業員の研修費用などを加算します。これらの費用もすべて人件費の一部です。会計帳簿などを確認し、該当する費用の年間合計額を算出します。

これらのステップ1から3までをすべて合算した金額が、企業の年間総人件費となります。

自社の経営状況を把握する3つの重要指標

人件費の総額を算出しただけでは、その金額が自社の経営状況に対して適切なのか判断できません。そこで、売上や利益とのバランスを見るための経営指標が重要になります。ここでは代表的な3つの指標を紹介します。

1. 売上高人件費率の計算方法と業界別目安

売上高人件費率は、売上高に対して人件費がどれくらいの割合を占めているかを示す指標です。この数値が高いほど、人件費が経営を圧迫している可能性があることを示します。

計算式:売上高人件費率(%) = 人件費 ÷ 売上高 × 100

適正な人件費率は業種によって大きく異なります。
例えば、労働集約型のサービス業では高く、設備投資の大きい製造業では低くなる傾向があります。中小企業庁の調査を参考に、自社の業界平均と比較してみましょう。

業種 売上高人件費率の業界別目安

全業種平均

約9.6%

建設業

約8.9%

製造業

約7.4%

情報通信業

約17.3%

運輸業

約8.7%

卸売業

約5.8%

小売業

約11.5%

不動産業、物品賃貸業

約11.5%

学術研究、専門・技術サービス業

約22.9%

宿泊業、飲食サービス業

約28.4%

生活関連サービス業、娯楽業

約12.6%

サービス業(他に分類されないもの)

約19.7%

参考:総務省・経済産業省「中小企業実態基本調査(令和5年確報/令和4年度決算実績)」(3) 産業別・資本金階級別表(法人企業)

2. 労働分配率で利益の分配バランスを知る

労働分配率は、企業が生み出した付加価値(粗利益)のうち、どれだけが人件費として従業員に分配されたかを示す指標です。これにより、企業の利益が従業員に適切に還元されているかどうかのバランスを見ることができます。

計算式:労働分配率(%) = 人件費 ÷ 付加価値額(売上総利益) × 100

労働分配率が高すぎる場合は、利益を圧迫している可能性があり、低すぎる場合は、従業員への還元が不十分でモチベーション低下につながる恐れがあります。

3. 労働生産性で従業員の貢献度を測る

労働生産性は、従業員一人ひとりがどれだけの付加価値を生み出しているかを示す指標です。この数値が高いほど、効率的に利益を生み出せていることを意味します。

計算式:労働生産性 = 付加価値額(売上総利益) ÷ 従業員数

労働生産性を定期的に計測し、向上させる施策を打つことは、人件費の適正化と企業の成長に直結します。

人件費を適正化するための具体的な方法

人件費の指標を分析し、改善が必要だと判断された場合、どのような対策を講じればよいのでしょうか。単に給与を下げたり、人員を削減したりするだけでは、従業員の士気を下げ、長期的な成長を阻害する可能性があります。
ここでは、生産性を高め、人件費を適正化するための前向きな方法を紹介します。

業務プロセスの見直しによる生産性向上

最初のステップとして、既存の業務フローに無駄がないかを見直すことが重要です。定例会議の時間を短縮する、報告書のフォーマットを統一して作成時間を削減するなど、日々の業務の中にある非効率な部分を洗い出し、改善します。従業員一人ひとりの作業時間が短縮されれば、それは人件費の削減に繋がります。

ITツールやシステムの導入による自動化

勤怠管理、経費精算、給与計算といった定型的な事務作業は、ITツールやクラウドシステムを導入することで大幅に効率化できます。RPA(Robotic Process Automation)などを活用して単純作業を自動化すれば、従業員はより付加価値の高い業務に集中できるようになり、会社全体の生産性が向上します。

人事評価制度の改善で従業員の意欲を高める

従業員の貢献度や成果が、給与や賞与に正当に反映される人事評価制度を構築することも重要です。評価基準を明確にし、従業員が納得できる評価を行うことで、仕事へのモチベーションが高まります。意欲の高い従業員が増えれば、生産性が向上し、結果的に人件費率の改善につながるでしょう。

助成金や補助金の活用を検討する

国や地方自治体は、雇用の維持や促進、労働環境の改善に取り組む企業を支援するために、様々な助成金や補助金を用意しています。例えば、非正規雇用労働者を正社員化した場合や、育児休業の取得を促進した場合に支給される助成金などがあります。
これらの制度を積極的に活用することで、実質的な人件費の負担を軽減することが可能です。

人件費計算でよくある質問

パートやアルバイトの給与も人件費に含まれますか?

パートタイマーやアルバイトなど雇用形態にかかわらず、企業が雇用する従業員に支払う給与はすべて人件費として計上します。会計上、「給与」ではなく「雑給」という勘定科目で処理されることもありますが、人件費総額を計算する際には必ず含める必要があります。

派遣社員にかかる費用は人件費としてどう扱いますか?

派遣社員に支払う費用は、会計上「人件費」ではなく「支払手数料」や「外注費」として扱われるのが一般的です。これは、派遣社員が自社と直接の雇用契約を結んでいるわけではないためです。ただし、経営実態を把握する上では、これらも人に関する費用として広く捉え、管理していくことが重要です。

まとめ

人件費の正確な把握と管理は、企業の財務健全性を維持し、持続可能な経営戦略を構築する上で不可欠です。本記事で解説した内訳や計算方法、そして売上高人件費率や労働分配率といった指標を用いて自社の状況を分析し、経営の健全化に役立ててください。

人件費の見直しは、企業の成長と持続的な経営の鍵となります。
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