情シス業務を外部委託で効率化!依頼できる業務範囲と注意点を徹底解説
2025.9.26

「情シス(情報システム部門)」とは、社内のITインフラやシステム運用、セキュリティ管理などを担う部門のことを指します。
「情シス担当者が退職してしまい、業務が回らない」「日々の問い合わせ対応に追われ、本来やるべきIT戦略の策定が進まない」このような課題に直面している企業も少なくありません。
多くの企業でIT人材の不足や業務範囲の拡大が問題となる中、解決策として「情シス業務の業務委託(アウトソーシング)」が注目されています。
業務委託を活用することで、コストを抑えながら専門性の高いITサポートを受けられ、社内リソースをより重要な業務に集中させることが可能になります。本記事では、情シス業務の業務委託を検討中の企業様に向けて、業務委託のメリット・デメリットから、委託可能な業務範囲、費用相場まで詳しく解説します。
目次
情シス業務のアウトソーシング(業務委託)が注目される理由
近年、多くの企業で情報システム部門、通称「情シス」の業務を外部の専門企業に委託する動きが加速しています。
なぜ今、情シスの業務委託がこれほどまでに注目されているのでしょうか。その背景には、現代企業が直面する複数の根深い課題が存在します。
IT人材の不足と採用コストの高騰
経済産業省の調査によると、IT人材は2030年には最大で約80万人不足すると予測されており、企業間の人材獲得競争は激化の一途をたどっています。 特に専門性の高いスキルを持つエンジニアの採用は困難を極め、採用できたとしても人件費は高騰し続けています。自社で優秀なIT人材を雇用し続けることは、多くの企業にとって大きな経営的負担となっています。業務委託は、こうした採用難やコスト高の問題を解決する有効な手段です。
参考:参考資料(IT人材育成の状況等について)ひとり情シス・兼任情シスによる業務負担の増加
特に中小企業では、情シス担当者が一人しかいない「ひとり情シス」や、他の業務と兼任しているゼロ情シス(情シス担当者が不在)の状態が少なくありません。 このような状況では、日々のヘルプデスク対応、PCのキッティング、トラブル対応といった定型業務に追われ、担当者の業務負担は計り知れないものとなります。
結果として、本来注力すべきIT戦略の立案や業務改善といった付加価値の高い仕事に着手できず、企業の成長を阻害する一因にもなりかねません。
DX推進による業務範囲の拡大
デジタルトランスフォーメーション(DX)の波が押し寄せる中、情シスに求められる役割は従来の社内インフラ管理に留まらなくなりました。クラウドサービスの導入、AIやRPAを活用した業務自動化、全社的なセキュリティ体制の強化など、業務範囲は拡大し、より高度な専門知識が要求されています。
全てを社内リソースだけでカバーするのは現実的ではなく、必要な専門知識を持つ外部パートナーとの連携が不可欠となっています。
課題 | 背景 | 業務委託による解決策 |
---|---|---|
人材確保の問題 |
・IT人材の不足 |
必要なスキルを持つ専門人材を迅速かつ柔軟に確保できる |
業務負担の問題 |
・ひとり情シス |
ヘルプデスク等を委託し、担当者の負担を軽減する |
専門性の問題 |
・DX推進 |
自社にない高度な専門知識や最新技術を補完できる |
情シスを業務委託する5つのメリット

情シス業務を業務委託することには、単なる人手不足の解消に留まらない、多くの戦略的メリットが存在します。コスト削減はもちろん、業務効率の向上や事業の成長促進にも繋がる可能性があります。
コア業務にリソースを集中できる
最大のメリットは、社内の貴重なリソースを「コア業務」に集中させられる点です。
日常的な問い合わせ対応やPC設定、システムの監視といったノンコア業務を外部に委託することで、情シス担当者は事業戦略に直結するシステムの企画・開発や、業務プロセスの改善といった、より付加価値の高い業務に時間とエネルギーを割くことができます。
専門知識・スキルを持つ人材を確保できる
自社で採用・育成するには時間とコストがかかるような、高度な専門知識を持つプロフェッショナル人材のサポートを即座に受けられることも大きな利点です。
例えば、最新のセキュリティ脅威への対策、複雑なクラウド環境の構築・運用など、特定の分野に長けた専門家の知見を活用することで、自社のIT環境をより安全かつ効率的に運用できます。
採用・人件費などのコストを削減できる
IT人材を一人正社員として雇用する場合、給与だけでなく、採用活動費、社会保険料、教育研修費など、多大なコストが発生します。業務委託であれば、必要な業務を必要な分だけ依頼するため、固定費である人件費を変動費化し、トータルコストを大幅に抑制することが可能です。
業務の属人化を防止できる
特定の担当者しか業務内容や手順を把握していない「属人化」は、その担当者の休職や退職が業務停滞に直結する大きな経営リスクです。業務委託を利用し、業務プロセスを標準化・可視化することで、この属人化リスクを軽減できます。 外部委託先がチーム体制で対応するため、安定した業務遂行が期待できます。
従業員の負担を軽減し満足度を向上させる
ノンコア業務を外部に委託することで、情シス担当者の過度な業務負担が軽減されます。これにより、長時間労働の是正やワークライフバランスの改善が期待できます。 担当者は自身の専門性を活かせるやりがいのある業務に集中できるため、仕事への満足度やモチベーションの向上にも繋がります。
情シスを業務委託する際のデメリットと注意点
多くのメリットがある一方で、情シスの業務委託には慎重に検討すべきデメリットや注意点も存在します。契約後に後悔しないためにも、潜在的なリスクを事前に理解し、対策を講じることが重要です。
社内にノウハウが蓄積しにくい
業務を外部に丸投げしてしまうと、トラブル解決のプロセスやシステム運用の知見といったノウハウが社内に蓄積されにくくなるというデメリットがあります。 これにより、将来的に内製化を目指す際に障壁となったり、委託先への依存度が高まりすぎたりする可能性があります。
定期的なレポート提出や技術移転の機会を契約に盛り込むなど、ノウハウ共有の仕組みを構築することが大切です。
情報漏洩のリスク管理が必須になる
企業の機密情報や個人情報などを外部の委託先と共有することになるため、情報漏洩のリスクは常に考慮しなければなりません。委託先を選定する際には、プライバシーマークやISMS(ISO 27001)認証の取得状況を確認するなど、セキュリティ対策が万全であることを必ずチェックしましょう。
また、契約時には秘密保持契約(NDA)を締結し、情報の取り扱い範囲を明確に定めておくことが不可欠です。
委託する業務範囲の適切な切り分けが必要
すべての業務を外部に委託することが、必ずしも最適な選択とは限りません。特に、企業の事業戦略に深く関わる「コア業務」まで委託してしまうと、自社の競争力を損なうリスクが生じる可能性があります。
そのため、どの業務を外部に委託すべきか(ノンコア業務)、どの業務を社内で担うべきか(コア業務)を明確に区分することが重要です。まずは自社のIT業務全体を棚卸しし、業務の重要度や専門性、定型業務かどうかといった観点から整理・分類した上で、委託の可否を判断する必要があります。
費用対効果の判断が難しい
業務委託による効果は、システムの安定稼働やトラブルの未然防止など、直接的な金額として測りにくいものが多く含まれます。そのため、支払う費用に対して十分な効果が得られているのか、費用対効果の評価が難しい側面があります。
導入前に、何を課題とし、どのような状態になることを目指すのか、具体的な目標(KPI)を設定し、定期的に達成度を評価する仕組みを作ることが求められます。
デメリット・注意点 | 具体的な対策 |
---|---|
ノウハウの空洞化 |
・定期的な報告会や技術移転セッションの実施を契約に含める。 |
情報漏洩リスク |
・ISMS認証などのセキュリティ認証の有無を確認する。 |
業務の切り分け |
IT業務を棚卸しし、コア業務とノンコア業務を明確に定義する。 |
費用対効果の評価 |
導入前に課題と目標(KPI)を明確化し、定期的に効果測定を行う。 |
業務委託で依頼できる情シスの主な業務範囲

情シスの業務委託と一言でいっても、そのサービス内容は多岐にわたります。企業の課題やニーズに応じて、様々な業務を組み合わせて委託することが可能です。
ここでは、代表的な業務範囲をご紹介します。
ヘルプデスク・サービスデスク業務
社員からのITに関するあらゆる問い合わせに対応する窓口業務です。
「パスワードを忘れた」「ソフトの使い方がわからない」「プリンターに接続できない」といった日常的な質問から、専門的なトラブルシューティングまで幅広く対応します。情シス担当者が日々の問い合わせ対応から解放され、本来の業務に集中できるようになります。
PC・IT資産の管理(キッティング)
新入社員の入社やPCの入れ替え時に発生する、PCのセットアップ作業(キッティング)も委託可能です。OSやアプリケーションのインストール、各種設定、セキュリティ対策などを代行します。
また、社内のPCやソフトウェアライセンスといったIT資産を管理する台帳の作成・更新作業も任せることができ、管理業務の効率化とコンプライアンス強化に繋がります。
サーバー・ネットワークの構築・運用保守
専門的な知識が不可欠なサーバーやネットワークインフラの設計、構築、そして日々の運用・保守も委託できます。 サーバーの稼働監視、障害発生時の一次対応、定期的なメンテナンスなどを通じて、企業のIT基盤を24時間365日安定稼働させます。クラウドサーバーの構築・運用支援に対応するサービスも増えています。
セキュリティ対策の強化・運用
巧妙化・悪質化するサイバー攻撃から企業の情報を守るためのセキュリティ対策も、重要な委託業務の一つです。ファイアウォールの運用監視、ウイルス対策ソフトの管理、不審な通信の検知・分析、セキュリティパッチの適用などを専門家が代行します。 これにより、自社だけでは対応が難しい高度なセキュリティ対策を実現できます。
データのバックアップ・復旧作業
万が一のシステム障害や災害、ランサムウェア攻撃などに備え、企業の重要なデータを保護するためのバックアップ運用も委託できます。 定期的なバックアップの実行と、有事の際に迅速にシステムを復旧させるための手順の策定・訓練などを任せることで、事業継続性(BCP)を高めることができます。
【失敗しない】情シス業務委託先の選び方5つのポイント

業務委託の成功は、委託先となるパートナー企業の選定に大きく左右されます。数あるサービス提供企業の中から、自社に最適な一社を見極めるためには、いくつかの重要なチェックポイントを押さえておくことが不可欠です。
ここでは、選定時に確認すべき5つのポイントを詳しく解説します。
自社の課題に合ったサービス・対応範囲か確認する
まずは、自社が抱える課題を解決できるサービス内容かどうかを見極めることが最も重要です。
「ヘルプデスク業務の負担を軽減したい」「セキュリティを強化したい」「クラウド移行を支援してほしい」など、委託したい目的を明確にしましょう。その上で、委託先の提供するサービス範囲が自社の要望を過不足なく満たしているか、詳細に確認する必要があります。
費用とサービス内容のバランスを見極める
料金体系は委託先によって様々で、月額固定制や従量課金制などがあります。単純な価格の安さだけで選ぶのではなく、提供されるサービス内容や品質と見合っているか、費用対効果を慎重に判断しましょう。 初期費用や追加料金の有無も事前に確認し、トータルコストで比較検討することが大切です。
導入実績、特に同業種・同規模での実績を確認する
豊富な導入実績は、信頼性の高いサービスであることの一つの指標となります。 特に、自社と同じ業界や同じくらいの企業規模でのサポート実績があるかどうかは重要な判断材料です。業界特有のシステムや課題に対する理解が深い可能性が高く、よりスムーズな導入と的確なサポートが期待できます。
高いセキュリティ基準をクリアしているか確認する
企業の機密情報を預ける以上、委託先のセキュリティ体制は徹底的に確認しなければなりません。情報セキュリティマネジメントシステムの国際規格である「ISO 27001(ISMS)」や、「プライバシーマーク」を取得しているかどうかは、客観的な判断基準となります。 スタッフへの教育体制や物理的なセキュリティ対策についても確認しておくと、より安心です。
円滑なコミュニケーションが取れる体制か確認する
業務を円滑に進めるためには、委託先の担当者との密なコミュニケーションが不可欠です。報告・連絡・相談の体制はどのようになっているか、定例会の頻度、緊急時の連絡手段などを事前に確認しておきましょう。 担当者の人柄や対応の丁寧さなども、長期的なパートナーシップを築く上では見逃せないポイントです。
情シス業務委託の費用相場
業務委託を検討する上で、最も気になるのが費用でしょう。費用は、企業の規模、委託する業務範囲、求めるサービスレベルによって大きく変動します。ここでは、一般的な費用相場を解説します。
【企業規模別】中小企業の費用相場
従業員数が数名から100名程度の中小企業の場合、月額10万円から30万円程度が一般的な相場です。
この価格帯では、主にヘルプデスク対応や基本的なIT資産管理など、特定の業務に絞って委託するケースが多く見られます。リソースが限られる中小企業にとっては、コストを抑えつつ専門的なサポートを得られる有効な選択肢となります。
【企業規模別】大手企業の費用相場
従業員数が数百名以上の大手企業では、委託するシステムの規模や複雑性が増すため、費用は月額50万円以上になることが一般的です。広範囲な業務を包括的に委託したり、24時間365日の監視体制を求めたりする場合、費用がさらに高くなるケースもあります。高度なセキュリティ対策や大規模システムの運用管理など、より専門的で包括的なサポートが求められます。
【契約形態別】業務内容による費用の違い
費用は契約形態によっても変わります。例えば、基本的な問い合わせ対応のみであれば比較的安価ですが、サーバーの常時監視や専門家が常駐するようなサービスは高額になります。
また、ヘルプデスク業務のみを切り出すのか、インフラ運用まで含めて包括的に委託するのかによっても、費用は大きく異なります。自社の予算と必要なサービス範囲を照らし合わせ、最適なプランを選択することが重要です。
企業規模 | 月額費用相場 | 主な委託業務 |
---|---|---|
中小企業 |
10万円~30万円 |
・ヘルプデスク |
大手企業 |
50万円~ |
・包括的なシステム運用、保守 |
まとめ
本記事では、情シスの業務委託が注目される背景から、そのメリット・デメリット、具体的な業務範囲、そして失敗しないための委託先選定のポイントまでを網羅的に解説しました。
IT人材の不足や業務の多様化といった課題に直面する現代の企業にとって、情シス業務の業務委託は非常に有効な戦略的選択肢です。コスト削減や業務効率化といった直接的な効果に加え、コア業務への集中による事業成長の促進も期待できます。
重要なのは、自社の課題を明確にし、その解決に最適なパートナーを慎重に選ぶことです。
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