委託と請負の違いとは?契約形態の選び方から注意点までわかりやすく解説
2026.1.16
企業の業務効率化や専門知識の活用を目的として、外部の企業や個人に業務を委託する「業務委託」は、現在では広く活用されています。
しかし、業務委託契約を締結する際に「委託」と「請負」の違いを曖昧にしたまま進めると、予期せぬトラブルや法的なリスクを招く可能性があります。
本記事では、業務委託を検討している企業の担当者様や、個人で業務を受託する方に向けて、「委託」と「請負」の基本的な違いから、それぞれのメリット・デメリット、契約時の注意点まで、網羅的に解説します。
目次
業務委託契約とは?請負と委任のポイント
まず押さえておきたいポイントとして、「委託契約」や「業務委託契約」という言葉は、法律上の正式な契約類型ではありません。
これはビジネス慣習上の総称であり、民法上では別の契約形態に分類されます。
業務委託契約は法律上どう扱われる?
一般的に業務委託契約と呼ばれるものは、民法上では次の2種類に分類されます。
- ・請負契約:仕事の完成を目的とする契約
- ・委任契約(または準委任契約):業務の遂行を目的とする契約
契約書を作成する際は、その業務が請負に該当するのか、委任(または準委任)に該当するのかを明確に判断することが重要です。
| 契約の分類 | 説明 | 民法条文 |
|---|---|---|
| 請負契約 | 「仕事の完成」を目的とする契約 | 第632条~第642条 |
| 委任契約/準委任契約 | 「業務の遂行」を目的とする契約 | 第643条~第656条 |
委任契約は弁護士への訴訟依頼など「法律行為」を委託する場合に使われます。
準委任契約はコンサルティングやシステム運用保守など「事実行為(事務処理)」を委託する場合に使われます。準委任契約は委任契約の規定を準用するため、基本的な性質は同じです。本記事では両者をまとめて「委任契約」として解説します。
【比較表】委任契約と請負契約の5つの違い
では、「請負契約」と「委任契約」には具体的にどのような違いがあるのでしょうか。
両者の特徴を5つのポイントで比較してみましょう。
| 比較項目 | 請負契約 | 委任契約(準委任契約) |
|---|---|---|
| 目的 | 仕事の完成 | 業務(事務処理)の遂行 |
| 報酬の対象 | 完成した成果物 | 業務を遂行したプロセス(労働力や時間) |
| 責任の範囲 | 契約不適合責任(成果物の欠陥等) | 善管注意義務(善良な管理者としての注意義務) |
| 契約解除 | 成果物の完成前であれば委託者はいつでも可能(損害賠償が必要) | 両当事者がいつでも可能(相手方に不利な時期は損害賠償が必要) |
| 指揮命令権 | 委託者にはなし(受託者側の管理者が指揮命令を行う) | 委託者にはなし(受託者側の管理者が指揮命令を行う) |
目的:業務の遂行か、成果物の完成か
最も大きな違いは、契約の「目的」です。
請負契約は、Webサイトの制作やプログラム開発、記事の執筆など、「仕事の完成」とそれに伴う「成果物の納品」を目的とします。
一方、委任契約は、コンサルティング業務や受付業務、システムの運用保守など、特定の成果物の有無を問わず、「業務行為そのもの」を遂行することを目的とします。
報酬の対象:業務のプロセスか、成果物か
契約の目的が異なるため、報酬支払いの対象も変わります。
請負契約では、受託者(請負人)が納品した「成果物」に対して報酬が支払われます。たとえ多くの時間を費やしたとしても、仕事が完成しなければ原則として報酬は請求できません。
対して委任契約では、受託者(受任者)が契約内容に従って業務を行った「プロセス(時間や労働力)」に対して報酬が支払われます。そのため、期待した結果が得られなかったとしても、適切に業務が遂行されていれば報酬を支払う義務が生じます。
責任の範囲:善管注意義務か、契約不適合責任か
受託者が負う責任の内容も異なります。
請負契約では、受託者は「契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)」を負います。これは、納品された成果物の種類、品質、数量が契約内容に適合しない場合に、委託者が修正や代替品の請求、代金減額、損害賠償請求、契約解除などを求めることができる責任です。
一方、委任契約では、受託者は「善管注意義務(ぜんかんちゅういぎむ)」を負います。これは、「その職業や社会的地位にある者として、一般的に要求されるレベルの注意を払って業務を遂行する義務」を指します。意図的な手抜きや明らかな過失がない限り、結果に対する責任までは問われません。
契約解除の条件
契約期間中の解除に関するルールも異なります。
請負契約では、仕事が完成する前であれば、委託者(注文者)はいつでも契約を解除できます。ただし、それによって受託者(請負人)に生じた損害は、賠償が必要です。
委任契約では、各当事者が原則としていつでも将来に向かって契約を解除できます。しかし、相手方にとって不利な時期に解除した場合や、解除にやむを得ない事由がない場合は、損害賠償責任を負うことがあります。
指揮命令権の有無
請負契約と委任契約に共通する重要なポイントは、委託者に指揮命令権がないことです。
業務の進め方や作業場所、時間配分などについて、委託者が受託者に直接指示することはできません。もし具体的な指示を行うと、違法な「偽装請負」と判断されるリスクがあります。
請負契約のメリット・デメリット
Webサイト制作やデザイン業務などを委託する場合に用いられる請負契約には、委託者にとって以下のメリット・デメリットがあります。
メリット:成果物に対して報酬を支払うためコスト管理がしやすい
請負契約は、完成した成果物に対して報酬を支払う契約です。
そのため、委託者にとっては「何に対していくら支払うのか」が明確であり、費用対効果の検証や予算管理がしやすいというメリットがあります。仕様通りの成果物が納品されなければ、原則として報酬は発生しません。
デメリット:業務の進め方に直接的な指示ができない
請負契約では、委託者には受託者のスタッフに対する直接の指揮命令権がありません。ただし、業務の方向性や仕様に関する要望を「受託者側の窓口担当者を通じて」伝えることは問題ありません。
一方で、委託者がスタッフ個人に対して作業手順や細かな動きを直接指示すると、実態が「派遣」に近くなり、偽装請負と判断されるリスクが生じます。
そのため、成果物のイメージを確実に共有するためには、受託者と綿密にコミュニケーションを取り、事前に仕様を明確化しておくことが重要です。
委任/準委任契約のメリット・デメリット
コンサルティングや専門的な事務処理などを委託する場合に用いられる委任契約には、以下のメリット・デメリットが存在します。
メリット:専門的な業務を柔軟に依頼できる
委任契約は、特定の成果物を定めず、専門家による業務の遂行そのものを目的とします。
そのため、仕様を固めるのが難しいコンサルティング業務や、市場調査、システムの運用・保守といった継続的な業務の委託に適しています。専門家の知見やスキルを、柔軟に活用できる点が大きなメリットです。
デメリット:成果物が保証されないリスクがある
報酬が業務のプロセスに対して支払われるため、委託者が期待するような成果が得られなかった場合でも、報酬を支払わなければならないというデメリットがあります。
受託者は善管注意義務を負いますが、結果を保証するものではないため、委託者は受託者の能力や実績を慎重に見極める必要があります。
【状況別】委託と請負の適切な選び方
自社の業務を委託する際、どちらの契約形態を選ぶべきか迷うこともあるでしょう。
ここでは、状況に応じた選び方のポイントを解説します。
成果物が明確に定義できる業務は「請負契約」が適している
Webサイトの構築、ソフトウェア開発、ロゴデザイン、記事作成など、完成させるべき「成果物」の仕様を具体的かつ明確に定義できる業務は「請負契約」が適しています。「いつまでに、何を、どのような状態で」納品してもらうかを契約書で定めることで、双方の認識の齟齬を防ぎます。
専門的な事務処理や相談業務は「委任/準委任契約」が適している
弁護士への法律相談(委任契約)や、税理士への税務顧問、コンサルタントへの経営相談、システムのヘルプデスク業務(準委任契約)など、仕事の成果を一つの形で定義することが難しい業務や、専門家による継続的なサポートが必要な業務は「委任/準委任契約」が適しています。
業務委託と派遣の決定的な違い
業務委託と混同されやすいものに「労働者派遣」があります。
特に、受託先のスタッフが委託元のオフィスに常駐して業務を行う場合、その違いを明確に理解しておく必要があります。
指揮命令権の所在を正しく理解する
業務委託(請負・委任)と派遣の最も大きな違いは、「指揮命令権が誰にあるか」です。
業務委託:
委託者は受託者(またはその従業員)に対して、業務の進め方について直接指示を出すことはできません。指揮命令は、受託者側の責任者が行います。
労働者派遣:
派遣先企業(委託者)は、派遣スタッフに対して直接、業務に関する指揮命令を行うことができます。
この違いを理解しないまま、業務委託契約を結んだ相手に直接指示を出してしまうと、違法な「偽装請負」と判断されるリスクがあります。
契約前に必ず確認すべき3つの注意点
業務委託契約を締結する際には、法的なリスクを回避するために、以下の3つの点に特に注意が必要です。
注意点1:偽装請負のリスクを理解する
偽装請負とは、契約形式上は「請負」や「業務委託」でありながら、実態としては「労働者派遣」に該当する状態を指します。委託者が受託者の従業員に対して、勤務時間の管理を行ったり、業務のやり方を具体的に指示したりすると、偽装請負とみなされる可能性があります。
偽装請負と判断されると、労働者派遣法違反として行政指導や罰則の対象となり、企業にとって重大なリスクとなります。
注意点2:下請法の対象になるか確認する
委託する業務が、資本金の区分によっては「下請法(下請代金支払遅延等防止法)」の適用対象となる場合があります。下請法が適用される場合、委託者(親事業者)には、発注書面の交付義務、不当な代金減額の禁止、支払期日を定める義務などが課せられます。
これらの義務に違反すると、行政指導や勧告、罰金の対象となるため、自社の取引が下請法の対象となるか事前に確認が必要です。
注意点3:情報漏洩対策を講じる
業務を外部に委託するということは、自社の機密情報や顧客の個人情報を外部の事業者に共有することを意味します。そのため、情報漏洩のリスクは常に伴います。
委託先を選定する際は、その企業のセキュリティ体制を十分に確認するとともに、契約書には必ず「秘密保持義務」に関する条項を盛り込み、情報の取り扱いについて厳格なルールを定めることが不可欠です。
業務委託契約書に盛り込むべき重要項目
トラブルを未然に防ぐためには、契約書の内容を充実させることが最も重要です。
契約形態が請負か委任かを問わず、以下の項目は最低限盛り込むようにしましょう。
業務内容と成果物の定義を明確にする
「何を依頼するのか」を誰が読んでも分かるように、具体的かつ明確に記載することが重要です。
請負契約の場合は、納品すべき成果物の仕様(スペック、品質基準、数量など)を詳細に定義します。
委任契約の場合は、遂行すべき業務の範囲や内容を具体的に定めます。
報酬(金額、支払条件)を書面で定める
報酬の金額、計算方法(固定額か、時間単価かなど)、支払時期、支払方法などを明確に記載します。
経費の負担をどちらが行うのかについても、事前に取り決めておくことが重要です。
知的財産権の帰属先を明記する
特に請負契約において、納品される成果物(デザイン、プログラム、文章など)の著作権をはじめとする知的財産権が、報酬の支払い後に委託者に移転するのか、それとも受託者に留保されるのかを明確に定めておきましょう。
成果物の著作権は原則として受託者に帰属します(著作権法第17条)。契約書に移転条項を明記しない限り、委託者に移転しない点に注意が必要です。
秘密保持に関する義務を定める
業務を通じて知り得た相手方の技術情報、顧客情報、経営情報などを、第三者に漏洩したり、契約目的外で使用したりすることを禁止する条項です。
契約が終了した後の義務期間についても定めておくのが一般的です。
まとめ
「委託」と「請負」は、どちらも外部リソースを活用するための有効な手段ですが、その法的性質は大きく異なります。契約の目的が「成果物の完成」なのか「業務の遂行」なのかによって、選ぶべき契約形態、そして当事者が負うべき責任や権利が変わってきます。
業務委託を成功させる鍵は、業務内容に合わせて適切な契約形態を選択し、双方の合意内容を具体的かつ明確に契約書に明記することです。本記事で解説した違いや注意点を参考に、リスクを管理し、健全な取引関係を築いてください。
BREXA Technology(BREXA Tech)では、人材をお探しの企業様に向けて、プロジェクトに応じた柔軟な人材活用サービスをご提供しています。
豊富な実績と専門知識を持つエンジニアが、貴社のプロジェクト成功を力強くサポートします。
業務内容やご状況に応じて、最適な人材活用方法をご提案いたしますので、必要に応じてご相談ください。