業務請負とは?業務委託・派遣との違い・メリット・偽装請負リスクまで解説
2025.12.09
企業が成長や業務効率化を目指すうえで、外部リソースの活用は非常に効果的な戦略です。その選択肢のひとつが「業務請負」ですが、似た言葉である「業務委託」や「人材派遣」との違いを正しく理解できているでしょうか。 もし、違いを曖昧なまま契約を進めてしまうと、意図せず法律に抵触するリスクがあります。
本記事では、業務請負を検討している企業担当者や、契約形態の違いを正しく理解したい方に向けて、基本から注意点までわかりやすく解説します。
目次
業務請負とは?意味と契約の基本
業務請負とは、アウトソーシングの一形態であり、特定の「仕事の完成」を目的として、その業務一式を外部の事業者へ委託する契約のことです。
仕事の完成を目的とする契約
業務請負は、民法第632条で定められた「請負契約」に該当します。この契約で最も重要なポイントは、目的が「仕事の完成」であることです。 例えば、システムの開発、ウェブサイトの制作、建物の建設などが典型的な例です。発注者(注文者)は、完成した成果物に対して報酬を支払う義務を負います。業務の遂行方法や時間配分などは、基本的に業務を請け負った事業者(請負人)の裁量に委ねられます。
業務委託契約の一種
「業務委託」という言葉は、外部に業務を委託する際の総称として広く使われていますが、法律上の正式な用語ではありません。一般的に、業務委託契約は、民法で定められた「請負契約」「委任契約」「準委任契約」の3つの契約形態の総称として理解されています。 つまり、業務請負は業務委託契約という大きな枠組みの中の一つと位置づけられます。
業務請負と業務委託・派遣の違い

業務請負を正しく理解するためには、特に「業務委託(委任・準委任契約)」や「人材派遣」との違いを明確に把握することが重要です。
業務委託との違い
業務請負は業務委託の一種ですが、同じ業務委託に含まれる委任契約や準委任契約とは目的が異なります。
- 請負契約:仕事の「完成」が目的
- 委任・準委任契約:特定の「業務の遂行」が目的
例えば、
- ・弁護士への訴訟代理依頼(委任契約)
- ・システムコンサルティング(準委任契約)
これらの場合、報酬は業務を行った期間や工数に応じて支払われるのが一般的です。
人材派遣との違い
人材派遣は、派遣会社が雇用する労働者を、派遣先企業の指揮命令のもとで働かせる契約形態です。 最大の違いは、指揮命令権の所在です。
- 業務請負:請負事業者が自社のスタッフに指示を出す
- 人材派遣:派遣先企業が派遣スタッフに直接指示を出す
このように、契約形態によって目的や指揮命令権が異なるため、正しく理解して選択することが重要です。
契約形態の比較表
これらの違いをまとめると、以下のようになります。
| 契約形態 | 目的 | 指揮命令権の所在 | 報酬の対象 |
|---|---|---|---|
| 業務請負(請負契約) | 仕事の完成 | 請負事業者 | 完成した成果物 |
| 委任・準委任契約 | 業務の遂行 | 受任者 | 業務の遂行自体 |
| 労働者派遣契約 | 労働力の提供 | 派遣先企業 | 労働時間 |
業務請負を活用するメリット
業務請負を導入することで、企業はコスト削減や管理負担の軽減、専門性の確保など、さまざまなメリットがあります。
コストを大幅に削減
自社で専門人材を直接雇用する場合、給与だけでなく社会保険料や福利厚生費、教育研修費など多くのコストが発生します。 業務請負を活用すれば、これらの人材関連コストを削減可能です。また、業務に必要な設備投資が不要になるケースもあり、経費全体の削減が期待できます。
管理業務の負担を軽減できる
業務請負では、進捗管理や労務管理を請負事業者が一括して対応します。発注企業は、個々の労働者への指示や勤怠管理を行う必要がないため、管理業務の負担を大幅に軽減できます。これにより、自社の社員はコア業務に集中でき、全体の生産性向上につながります。
専門性の高い業務を任せられる
自社にない専門的な知識や技術が必要な業務でも、その分野を専門とする事業者に委託することで、質の高い成果物を得ることが可能です。市場の変化に迅速に対応するため、新規事業の立ち上げや高度な技術を要するプロジェクトにおいて、専門家の力を借りることは非常に有効な手段です。
業務請負を活用するデメリット
多くのメリットがある一方で、業務請負には注意すべきデメリットも存在します。
ノウハウが自社に蓄積しにくい
業務を一括して外部に委託するため、その業務に関する知識や技術、遂行のノウハウが自社内に蓄積しにくいという側面があります。将来的にその業務を内製化したい場合には、長期的な視点での検討が必要です。必要に応じて、情報共有やドキュメント化の仕組みを整えることが望まれます。
指揮命令ができない
業務請負の特徴として、発注企業は請負事業者の労働者に対して直接指示を出すことができません。 業務の進め方や手順を変更したい場合、必ず請負事業者の責任者を通じて依頼する必要があります。そのため、仕様変更や修正の際にコミュニケーションの手間や時間がかかる場合があります。 スムーズな対応を実現するためには、契約時に明確な仕様や変更ルールを取り決めておくことが重要です。
偽装請負とは?違法リスクと防止策

業務請負で最も注意すべきなのが「偽装請負」です。これは法律違反であり、厳しい罰則の対象となる可能性が高いです。
偽装請負とは?
偽装請負とは、契約書上は「請負契約」であるにもかかわらず、実際には「労働者派遣」と同じ状態になっているケースを指します。具体的には、発注者が請負事業者の労働者に対して直接指揮命令を行っているケースなどがこれにあたります。 この状態は、労働者の雇用責任の所在を曖昧にし、労働者の権利が守られない状況を生み出すため、法律で固く禁じられています。
厚生労働省が示す判断基準
厚生労働省は「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(昭和61年労働省告示第37号)で、適正な請負と判断されるための要件を明確に示しています。主なポイントは次の2つです。
-
- 業務の遂行に関する指示・管理を自ら行うこと
請負事業者が、自社の労働者に対して業務指示や評価、勤怠管理などを自ら行っていること。
-
- 請け負った業務を自己の業務として独立して処理すること
業務に必要な資金を自ら負担し、業務上の責任をすべて請負事業者が負うなど、発注者から独立して業務を遂行していること。
これらの基準に照らして、実態として発注者の指揮命令下にあると判断される場合、偽装請負とみなされる可能性があります。
| 項目 | 適正な請負 | 偽装請負と見なされる可能性のある例 |
|---|---|---|
| 業務の指示 | 請負事業者の責任者が行う | 発注者が直接、労働者に指示する |
| 勤怠管理 | 請負事業者が行う | 発注者がタイムカードを管理し、残業を命じる |
| 配置決定 | 請負事業者が行う | 発注者が面接を行い、労働者を選別する |
指揮命令系統を明確にする
偽装請負を避けるためには、契約内容だけでなく、実際の業務運用の場面で指揮命令系統を明確に区分し、遵守することが極めて重要です。発注者側の社員が、善意であっても請負事業者の労働者に直接指示を出してしまうことがないよう、社内での周知徹底が求められます。
業務請負契約を結ぶ際の流れ
実際に業務請負を導入する際の、一般的な流れを解説します。
手順1: 委託する業務範囲の決定
まず、どの業務を、どこまでの範囲で外部に委託するのかを明確に定義します。成果物として何を求めるのか、品質の基準、納期などを具体的に定めることが、後のトラブルを防ぐ上で重要です。
手順2: 請負会社の選定
委託したい業務分野において、高い専門性や実績を持つ事業者を複数リストアップし、比較検討します。過去の実績や技術力、コンプライアンス遵守の体制などを評価し、最適なパートナーを選定します。
手順3: 契約書の作成と締結
選定した事業者と、業務内容や報酬、納期、責任の範囲など、詳細な条件を詰めていきます。双方の合意が得られたら、後述する重要項目を盛り込んだ業務請負契約書を作成し、締結します。
業務請負契約書に記載すべき重要項目

業務請負契約書は、万が一のトラブルから自社を守るための重要な書類です。以下の項目は必ず明記するようにしましょう。
業務内容と成果物
委託する業務の内容、範囲、そして納品を求める成果物の仕様を、可能な限り具体的に記載します。誰が読んでも解釈に齟齬が生じないレベルで詳細に記述することが望ましいです。
報酬と支払い条件
報酬の金額、算定方法、支払いの時期(検収後、月末締め翌月末払いなど)、支払い方法(銀行振込など)を明確に定めます。
契約不適合責任
納品された成果物が、契約内容に適合しないものであった場合(品質不良、バグなど)に、請負事業者が負う責任のことです。 修正や代替品の納品、損害賠償などの対応について、具体的に定めておきます。
知的財産権の帰属
成果物から生じる著作権や特許権などの知的財産権が、発注者と請負事業者のどちらに帰属するのかを明確にします。 ここを曖昧にしておくと、将来的に大きなトラブルに発展する可能性があります。
まとめ
業務請負は、コスト削減や業務効率化に大きく貢献する有効な経営手段です。しかし、そのメリットを最大限に活かすためには、人材派遣や他の業務委託契約との違いを正確に理解し、偽装請負のリスクを回避することが不可欠です。
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