ITアウトソーシングとSESの違い|契約形態・メリット・選び方を徹底解説
2025.12.24
ITプロジェクトを進める上で、人材不足やコスト、業務効率化といった課題に直面することは珍しくありません。
こうした課題を解決する手段として、外部リソースの活用が注目されています。
特に「ITアウトソーシング」と「SES」は、多くの企業で導入されている代表的な手法です。
しかし、この二つのサービスは似ているようで、その性質は大きく異なります。両者の違いを正しく理解しないまま導入を進めてしまうと、「期待した成果が得られない」「かえって管理コストが増大した」といった失敗に繋がる恐れがあります。
本記事では、ITアウトソーシングとSESの基本的な違いから、それぞれのメリット・デメリット、そして自社の状況に合わせた最適な選び方まで、分かりやすく解説します。
この記事を読めば、企業の課題解決に繋がる外部リソース活用の第一歩を踏み出せるでしょう。
目次
ITアウトソーシングとSESの基本的な違い
ITアウトソーシングとSESは、どちらも外部の企業の力を借りて自社の業務を推進するサービスですが、その目的と契約形態に大きな違いがあります。
まずは、それぞれの基本的な定義と、両者の違いを明確に理解しましょう。
ITアウトソーシングとは?業務プロセスを外部に委託する仕組み
ITアウトソーシングとは、情報システム部門が担う業務プロセスの一部、または全てを外部の専門企業に委託することです。委託する業務は、システムの企画・開発から運用・保守、ヘルプデスク、データ入力といった定型業務まで多岐にわたります。
アウトソーシングの本質は、業務プロセスの遂行と成果物の完成を外部に委託することにあり、契約形態としては「請負契約」が多く採用されます。この契約では、委託先企業が成果物を完成させる責任を負います。
SESとは?エンジニアの技術力を一定期間提供するサービス
SES(System Engineering Service)とは、特定のスキルを持つエンジニアの「技術力(労働力)」そのものを、一定期間提供してもらうサービスです。多くの場合、SES企業のエンジニアがクライアント企業に常駐し、クライアントのITプロジェクトのメンバーとして開発や運用の業務に従事します。
SESの本質は「労働力の提供」にあり、契約形態としては「準委任契約」が結ばれます。
この契約では、エンジニアは誠実に業務を遂行する義務を負いますが、アウトソーシング(請負契約)のように成果物を完成させる法的な責任までは負いません。
【比較表】一目でわかるアウトソーシングとSESの違い
両者の違いを一目で確認できるよう、以下の表にまとめました。
自社の目的に照らし合わせて、最適な選択を検討してください。
| 項目 | ITアウトソーシング(主に請負契約) | SES(準委任契約) |
|---|---|---|
|
契約の目的 |
業務プロセスの遂行と成果物の完成 |
エンジニアの技術力・労働力の提供 |
|
契約形態 |
主に請負契約 |
準委任契約 |
|
指揮命令権 |
委託先企業 |
SES企業(クライアントは直接指示不可) |
|
責任の範囲 |
成果物の完成責任を負う |
善管注意義務(誠実に業務を行う義務)を負う |
|
対価の対象 |
完成した成果物 |
エンジニアの労働時間や工数 |
|
業務の場所 |
委託先企業の社内が多い |
クライアント企業への常駐が多い |
なぜ今、ITアウトソーシングが注目されるのか
近年、多くの企業がITアウトソーシングやSESといった外部リソースの活用に注目しています。その背景には、現代のビジネス環境が抱える構造的な課題が存在します。
深刻化するIT人材不足を解消するため
近年、AI・クラウド・セキュリティなど先端技術に精通したIT人材の獲得競争は激化し、企業が必要な人材を自社だけで確保し続けることはますます困難になっています。
IPA が公開した『DX動向 2024』では、ビジネスアーキテクトやデータサイエンティストなど、DXを推進する人材の不足が日本企業のデジタル化の大きなボトルネックとなっていると指摘されています。
また、経済産業省の「デジタル時代の人材政策に関する検討会報告書 2024」にも、生成AIやDX推進に必要な高度人材の確保と育成が急務の課題として明記されています。
このように、IT人材不足は量だけでなく、質や専門性の面でも深刻化しており、アウトソーシングやSESといった外部リソースの活用は企業にとって戦略的に重要な選択肢となっています。
参考:IPA「DX動向2024」参考:経済産業省「デジタル時代の人材政策報告書2024」
働き方改革とDX推進を加速させるため
働き方改革の推進により、多くの企業で業務の効率化や生産性の向上が求められています。また、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進し、新たなビジネス価値を創出するためには、既存の業務プロセスを見直す必要があります。
定型的なノンコア業務をアウトソーシングすることで、自社の社員をより付加価値の高いコア業務に集中させることが可能です。これにより、組織全体の生産性が向上し、働き方改革やDXの推進を力強く後押しします。
ITアウトソーシングを活用するメリット
業務プロセスそのものを外部に委託するITアウトソーシングには、コスト面や品質面で多くのメリットがあります。
| アウトソーシングのメリット | 具体的な効果 |
|---|---|
|
コスト削減 |
・人件費、採用・教育コスト、設備投資の抑制 |
|
品質向上 |
・専門企業のノウハウ活用による業務品質の安定化 |
|
コア業務への集中 |
・社員を戦略的業務に集中させ、生産性向上と企業競争力の強化 |
コスト削減が可能
自社で専門人材を雇用する場合、給与だけでなく、社会保険料や教育研修費、福利厚生費など、多くのコストが発生します。
アウトソーシングを活用すれば、これらのコストを削減できます。さらに、システムの運用・保守など、24時間365日の対応が必要な業務も、アウトソーシングによって人件費や設備投資を抑えられます。
専門知識を活用し業務品質を向上できる
アウトソーシングを提供する企業は、特定の分野における高い専門性と豊富な経験を持っています。自社で対応するよりも専門企業に委託する方が、業務の品質やスピードが向上するケースは少なくありません。
法改正への対応や最新のセキュリティ対策など、専門知識が求められる業務をアウトソーシングすることで、常に業務品質を維持できます。
社員がコア業務に専念できる
システム監視やヘルプデスク対応などのノンコア業務をアウトソーシングすることで、IT部門の社員は、事業戦略に関わるシステム企画・開発といったコア業務に集中できます。
これにより、社員のモチベーション向上や企業全体の生産性アップが期待できます。
ITアウトソーシングを活用する際のデメリット
多くのメリットがある一方で、ITアウトソーシングには注意すべきデメリットも存在します。
導入を検討する際は、これらのリスクも十分に理解しておくことが重要です。
社内にノウハウが蓄積されにくい
業務プロセスごと外部に委託するため、その業務に関する知識や技術、改善ノウハウが自社に蓄積されにくいというデメリットがあります。委託先に依存しすぎてしまうと、将来的に自社で業務を遂行する能力が失われてしまう可能性があります。
契約満了や委託先の変更に備え、業務内容を定期的にレポーティングしてもらう、マニュアルを作成してもらうなどの対策が必要です。
業務の進捗管理が難しい
業務が自社の目の届かない場所で行われるため、進捗状況や品質をリアルタイムで把握することが難しくなる場合があります。委託先とのコミュニケーションが不足すると、認識の齟齬が生まれ、期待していた成果物と異なるものが納品されるといったトラブルに発展しかねません。
定期的なミーティングの実施や、明確なレポーティングラインの確立など、進捗を可視化する仕組みを構築することが重要です。
情報漏洩のリスクがある
業務を委託するということは、自社の機密情報や顧客情報を外部の企業に渡すことを意味します。そのため、情報漏洩のリスクは常に考慮しなければなりません。
委託先を選定する際には、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)認証の取得状況や、セキュリティポリシー、過去の実績などを十分に確認し、信頼できるパートナーを選ぶことが重要です。
SESを活用するメリット
SESは、特定のスキルを持つエンジニアの技術力を借りられるサービスです。リソース確保の柔軟性やスピード感といった大きなメリットがあります。
| SESのメリット | 具体的な効果 |
|---|---|
|
迅速な人材確保 |
採用活動にかかる時間とコストを削減し、即戦力エンジニアを短期間で確保可能 |
|
柔軟なリソース調整 |
プロジェクト単位で契約期間を調整でき、人件費を変動費化して経営の柔軟性を高める |
|
円滑なコミュニケーション |
SESエンジニアが自社に常駐するため、仕様確認や進捗共有がスムーズで、チームの一体感を醸成 |
必要なスキルを持つ人材を迅速に確保できる
自社でエンジニアを採用する場合、募集から選考、採用決定まで数ヶ月かかることもあります。
SESなら、プロジェクトに必要なスキルを持つエンジニアを、最短数週間で確保可能です。急な欠員補充や繁忙期の短期増員など、スピーディーな人材確保が求められる場面で力を発揮します。
プロジェクト単位で柔軟にリソースを調整できる
SESは、プロジェクト期間に合わせて「月単位」で契約するのが一般的です。開始時に増員し、終了と同時に契約を終えるなど、柔軟なリソース調整が可能です。
正社員雇用と比べ、人件費を固定費ではなく変動費として扱えるため、経営面でもメリットがあります。
自社常駐のためコミュニケーションが取りやすい
SESエンジニアは自社オフィスに常駐するため、社員と同じ環境で業務を進めます。仕様確認や進捗共有がスムーズに行え、認識のズレを防ぎやすいのが特徴です。
チームの一員として一体感を醸成しやすく、プロジェクト推進が円滑になります。
SESを活用する際のデメリット
SESは便利なサービスですが、その契約の特性上、いくつかの重要な注意点があります。
特に「指揮命令権」に関する理解は不可欠です。
SES契約では、エンジニアへの直接指示が契約上できない
SES契約(準委任契約)では、SESエンジニアへの指揮命令権はクライアント企業ではなく、SES企業にあります。これは、労働者派遣法や偽装請負防止の観点から定められた重要なルールです。
そのため、クライアント企業はSESエンジニアに対して「この機能を追加してほしい」などの具体的な作業指示や、残業命令、勤怠管理を直接行うことはできません。業務依頼は必ずSES企業の責任者を通じて行う必要があります。
成果物の完成責任は問えない
SES契約は、エンジニアの労働力提供を目的としており、成果物の完成を保証するものではありません。
そのため、プロジェクトが期限内に完了しなかった場合でも、SES企業に法的責任を問うことはできません。進捗管理や品質管理の責任は、あくまでクライアント企業側にあることを理解しておく必要があります。
【ケース別】アウトソーシングとSESの最適な選び方
ここまで解説してきた内容を踏まえ、自社の課題や目的に応じて、どちらのサービスを選ぶべきか、具体的なケースを考えてみましょう。
アウトソーシングが向いている企業の課題
以下のような課題を抱えている企業には、ITアウトソーシングの活用が適しています。
- システムの運用・保守やヘルプデスクなど、定型的で継続的な業務の負担を軽減したい
- 業務プロセス全体を専門企業に任せることで、コスト削減と品質向上を両立させたい
- ノンコア業務を切り離し、自社のリソースを戦略的なコア業務に集中させたい
SESが向いている企業の課題
一方、以下のような課題に対しては、SESの活用が効果的です。
- 新規プロジェクトの立ち上げにあたり、特定の開発言語やフレームワークのスキルを持つエンジニアを急いで確保したい
- プロジェクトの繁忙期に合わせて、数ヶ月間だけ開発メンバーを増員したい
- 自社でプロジェクトの主導権(進捗・品質管理)を握りつつ、不足している技術力だけを補いたい
人材派遣という選択肢との違い
外部リソースの活用という点では「人材派遣」も選択肢の一つです。
SESと人材派遣の最も大きな違いは「指揮命令権の所在」です。SESでは、指揮命令権はSES企業にありますが、人材派遣の場合は、クライアント企業(派遣先)が派遣スタッフに対して直接、業務上の指示を行うことができます。
頻繁に仕様変更が発生する業務や、細かな指示出しが必要な業務の場合は、人材派遣の方が適している場合があります。ただし、その分、管理・教育の責任もクライアント企業側が負わなくてはなりません。
| 活用方法 | 指揮命令権 | 適しているケース |
|---|---|---|
|
アウトソーシング |
委託先企業 |
業務プロセスごと外部に任せたい |
|
SES |
SES企業 |
プロジェクトの技術力を補強したい |
|
人材派遣 |
クライアント企業 |
直接指示をしながら業務を進めたい |
アウトソーシング・SES導入を成功させるためのポイント
ITアウトソーシングやSESを導入する際、成功に導くための重要なポイントを3つ紹介します。
導入目的と委託範囲を明確にする
なぜ外部リソースを活用するのか、その目的を明確にすることが出発点です。
「コストを削減」「専門性を補強」「業務効率化」など、目的によって選ぶサービスやパートナーは変わります。
その上で、「どの業務を」「どこまで」委託するのか、範囲を具体的に定義しましょう。役割分担が曖昧なままでは、責任の所在が不明確になり、トラブルの原因になります。
セキュリティ体制が信頼できる委託先を選ぶ
特にアウトソーシングの場合、自社の重要な情報を外部に預けることになります。
委託先を選ぶ際は、価格や技術力だけでなく、セキュリティ体制を厳しくチェックすることが不可欠です。
プライバシーマークやISMS認証の有無、セキュリティインシデント時の対応フロー、実績などを確認し、安心して業務を任せられるパートナーを選びましょう。
円滑なコミュニケーション体制を構築する
委託先に「丸投げ」してしまうと、導入は失敗に終わる可能性が高くなります。
委託先はあくまでビジネスパートナーであり、成功には密な連携が欠かせません。
定期的な進捗報告会の設定、チャットツールやプロジェクト管理ツールの導入、窓口担当者の明確化など、密に連携できる体制をあらかじめ構築しておくことが、プロジェクトを成功に導く鍵となります。
まとめ
本記事では、ITアウトソーシングとSESの違いや選び方のポイントを解説しました。
ITアウトソーシングは「業務の成果」、SESは「技術力(労働力)」を求める場合に最適なサービスです。両者の特徴を正しく理解し、自社の課題や目的に合わせて最適な選択をすることが重要です。
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