派遣と請負の違いとは?メリット・デメリットと選び方を徹底解説
2025.12.15
「外注」は、企業が社外に業務を依頼することの総称であり、請負契約や委任契約、派遣契約など複数の形態を含みます。一方、『業務委託』は、外注の一種であり、契約に基づいて業務を遂行する形態を指します。一般的には、請負契約や委任契約が業務委託の代表例です。
外注や業務委託を検討する際には、契約形態の違いを正しく理解することが重要です。
特に、派遣と請負は代表的な選択肢であり、目的や指揮命令権、報酬の対象が大きく異なります。
本記事では、外注・業務委託の基本を押さえたうえで、派遣と請負という代表的な契約形態の違いを詳しく解説します。
目次
派遣と請負の基本的な違い
派遣と請負は、どちらも外部の労働力を活用する点では共通していますが、その本質は全く異なります。契約の目的、指揮命令権の所在、そして報酬の対象という3つの観点から、その違いを明確に理解することが重要です。
契約形態の目的の違い
派遣契約の主な目的は、「労働力の確保」です。企業が人手不足に陥った際、必要なスキルを持つ人材を迅速に補充するために利用されます。契約は「労働者派遣契約」に基づき、派遣会社が雇用する労働者を派遣先企業に派遣します。
一方、請負契約の目的は「仕事の完成」です。発注元の企業は、特定の業務やプロジェクトの成果物を完成させることを目的として、請負会社に業務を委託します。民法第632条で定められている通り、請負人は仕事の完成を約束し、注文者はその仕事の結果に対して報酬を支払います。
指揮命令権の所在の違い
指揮命令権がどこにあるかは、派遣と請負を区別する最も重要なポイントです。
派遣の場合、労働者と雇用契約を結んでいるのは派遣会社ですが、実際の業務に関する指示(指揮命令)を行うのは派遣先企業です。 つまり、派遣スタッフは派遣先企業の担当者の指示に従って業務を遂行します。
対して請負では、指揮命令権は請負会社にあります。 発注元の企業が、請負会社の労働者に対して直接業務の指示を出すことはできません。作業の進め方や時間配分などは、すべて請負会社の管理者の責任において行われます。
報酬の支払い対象の違い
報酬が何に対して支払われるかという点も、両者で大きく異なります。
派遣契約では、報酬は「労働力の提供」に対して支払われます。 報酬は時給や日給など、派遣スタッフが働いた時間に基づいて計算されるのが一般的です。
一方で請負契約では、報酬は「仕事の完成(成果物)」に対して支払われます。 成果物を納品することで契約が完了し、その対価として報酬が支払われます。業務にかかった時間や人数は、原則として報酬額には影響しません。
| 比較項目 | 派遣契約 | 請負契約 |
|---|---|---|
| 契約の目的 | 労働力の確保 人手不足を補うために利用 |
仕事の完成 成果物の納品が目的 |
| 指揮命令権の所在 | 派遣先企業 派遣スタッフは派遣先の指示に従う |
請負会社 発注者は直接指示できない |
| 報酬の対象 | 労働力の提供 時給・日給など時間に応じて支払 |
成果物の完成 納品後に報酬を支払 |
派遣契約のメリット・デメリット
派遣契約を活用することで、企業はどのような恩恵を受け、どのような点に注意すべきなのでしょうか。
ここでは、企業側の視点からメリットとデメリットを解説します。
企業側のメリット
最大のメリットは、必要なスキルを持つ人材を迅速に確保できる点です。募集や採用にかかる手間と時間を大幅に削減できます。
さらに、繁忙期やプロジェクト期間だけといった、必要な期間だけ人材を確保できるため、人件費の固定化を防ぎ、コストを柔軟に調整可能です。
加えて、社会保険の手続きや給与計算などは派遣会社が行うため、労務管理の負担を軽減できるという利点もあります。
企業側のデメリット
派遣社員に任せられる業務範囲には制限があります。また、契約期間が定められているため、長期的な人材育成には繋がりにくい側面があります。
優秀な人材であっても、契約終了後には離職するため、社内にノウハウが蓄積されにくい点もデメリットです。さらに直接雇用に比べて、帰属意識が低くなる可能性も考慮する必要があります。
請負契約のメリット・デメリット
専門的な業務を外部に委託できる請負契約は、多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットも存在します。
企業側のメリット
請負契約の大きなメリットは、自社にない専門的なノウハウや技術を活用できる点です。専門性の高い業務をまるごと委託できるため、自社で人材を育成するコストや時間をかけることなく、高品質な成果物を得ることが期待できます。
また、業務の管理や労働者の労務管理を請負会社に一任できるため、管理コストを大幅に削減できます。
企業側のデメリット
発注側の企業は、請負会社の労働者に対して直接的な指揮命令を行えません。そのため、業務の進め方や品質について、細かい指示や修正をリアルタイムで行うことが難しい場合があります。
また、業務プロセスがブラックボックス化しやすく、社内にノウハウが蓄積されにくいというデメリットもあります。成果物の品質が請負会社のスキルに大きく依存するため、信頼できる業者選定が非常に重要です。
【比較表】派遣と請負の違いが一目でわかる
これまで解説した派遣と請負の違いを、以下の表にまとめました。
両者の特徴を比較し、自社のニーズに合う契約形態を検討する際にお役立てください。
| 項目 | 派遣 | 請負 |
|---|---|---|
| 契約形態 | 労働者派遣契約 | 請負契約 |
| 目的 | 労働力の確保 | 仕事の完成(成果物) |
| 指揮命令権 | 派遣先企業 | 請負会社 |
| 報酬の対象 | 労働時間 | 成果物 |
| 契約当事者 | 派遣元・派遣先・労働者 | 発注者・請負会社 |
| 労務管理責任 | 派遣会社 | 請負会社 |
派遣と請負、どちらを選ぶべきか?判断のポイント
自社にとって派遣と請負のどちらが最適なのかは、状況によって異なります。
以下の3つのポイントを基準に、慎重に判断することが重要です。
指揮命令を自社で行いたいか
業務の進め方について、自社の社員が直接指示を出して管理したい場合は、派遣契約が適しています。業務の進捗状況を細かく把握し、状況に応じて柔軟に指示を変更したいケースでは、指揮命令権が自社にある派遣が有効です。
逆に、業務のプロセスは問わず、最終的な成果物のみを求める場合は、請負契約が向いています。
業務の専門性が高いか
経理や総務などの定型的な事務作業や、一時的な人員補充であれば、派遣が適しています。
一方で、システム開発やデザイン制作、コンサルティングなど、高度な専門知識や技術が必要な業務は請負会社に委託するのが効果的です。
自社にないノウハウを活用したい場合は、請負契約を検討しましょう。
成果物の完成が目的か
契約の目的が、明確な「成果物」の納品である場合は、請負契約が適しています。例えば、「新しいウェブサイトを制作する」「特定の機能を実装したソフトウェアを開発する」といったケースです。
これに対し、「日々のデータ入力作業をサポートしてほしい」「受付業務を担当してほしい」など、労働力の提供そのものが目的であれば、派遣契約が適切です。
注意すべき「偽装請負」とは?
派遣と請負の違いを正しく理解しないまま契約を結ぶと、「偽装請負」と見なされるリスクがあります。偽装請負は違法行為であり、厳しい罰則の対象となるため、絶対に避けなければなりません。
偽装請負と判断されるケース
偽装請負とは、契約上は請負契約でありながら、実態として発注者が請負会社の労働者に直接指揮命令を行っている状態を指します。
例えば、
- ・発注者の社員が請負会社の労働者に業務の進め方や手順を細かく指示する
- ・勤怠管理を発注者が行う
こうしたケースは、実質的に労働者派遣と同じですが、派遣法で定められた義務を免れるための脱法行為と見なされます。
偽装請負の罰則とリスク
偽装請負と判断された場合、発注者と請負会社の双方が労働者派遣法違反に問われ、罰則の対象となります。
具体的には
- ・1年以下の懲役または100万円以下の罰金
- ・行政指導や企業名の公表
こうした処分により、企業の社会的信用を大きく損なうリスクがあります。
コンプライアンス遵守の観点からも、偽装請負は絶対に避けなければなりません。
契約時に確認すべき重要事項
トラブルを未然に防ぎ、外部人材を有効に活用するためには、契約時にいくつかの重要な点を確認する必要があります。
契約書の内容を十分に確認する
まず、派遣契約か請負契約か、契約の種類を明確に確認することが最も重要です。
契約書に記載されている以下の項目を隅々までチェックしましょう。
- ・業務内容
- ・報酬の支払い条件
- ・責任の所在
- ・指揮命令系統
少しでも不明な点があれば、契約を締結する前に必ず解消することが必要です。
特に、業務範囲を明確に定義しておくことは、後のトラブルを避ける上で不可欠です。
業務内容と指揮命令系統を明確にする
特に請負契約の場合は、発注者が労働者に直接指示を出さないという原則を徹底する必要があります。業務の指示は、必ず請負会社の責任者を通じて行う体制を構築し、社内にもそのルールを周知徹底させましょう。
契約の実態が契約書の内容と乖離しないよう、常に注意を払うことが重要です。
まとめ
外注には、業務委託(請負・委任)や派遣など複数の契約形態があります。目的が「成果物の納品」なのか「労働力の確保」なのかを明確にし、自社の課題に最も適した形態を選ぶことが重要です。
この記事を参考に、コンプライアンスを遵守しながら、戦略的な人材活用を実現してください。適切な選択が、企業の成長とプロジェクトの円滑な進行につながります。
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