コンジョイント分析とは、ユーザーにとって最適な商品・サービスのコンセプトを探し出すための分析手法です。主にマーケティングの分野で利用されています。今回は、コンジョイント分析の基礎知識や重要なポイント、分析によって実現できること、直交表など統計学の知識をまじえた分析のやり方を解説していきます。
目次
コンジョイント分析とは?最適な商品コンセプトを探るための手法
コンジョイント分析とは、主にマーケティングの分野で利用されている、ユーザーにとって最適な商品・サービスのコンセプトを探し出すための分析手法です。ここでの「コンセプト」とは、商品・サービスを構成する要素の組み合わせを指します。
たとえばノートパソコンというジャンルの商品には、機能や性能、デザイン、アフターサービス、価格などの要素があげられるでしょう。これらはコンジョイント分析において「属性」と呼ばれます。 さらに、性能という属性に着目したとき、CPUスペックやOSの種類、メモリ・ストレージ容量、バッテリー駆動時間など、具体的に設定されたものを「水準」といいます。
さまざまな属性と水準が組み合わさると、「スペックは低いが価格が安いもの」であったり、「軽くて持ち運びやすく、価格もスペックも高いもの」といった、あらゆるコンセプトのノートパソコンが考えられるのです。 そしてユーザーは、商品・サービスの購入時に、「どの属性・水準を重視するか」という基準をそれぞれ持っています。 そして、「唯一これが決め手」という強力な要因がある場合はあまりないといわれています。
つまり、多くのユーザーは自覚の有無にかかわらず、複雑に絡み合った属性と水準の組み合わせのなかから、自分が欲しいものを決定するのです。 コンジョイント分析によってコンセプトを最適化することで、多くのユーザーが気に入る商品・サービスの開発が可能となります。
コンジョイント分析のポイントは「商品全体の評価」
コンジョイント分析におけるデータ解析は、「多変量解析」を用います。 多変量解析とは、解析の対象となる項目が複数ある場合、その項目同士がどれだけ相互に関連しているかを分析する、統計的な技法です。
コンジョイント分析では、属性や水準の関連を見ながら商品全体に対する評価を行うことで、結果的に個々の要素がユーザーの購買行動に影響する度合いを算出します。 属性や水準にはトレードオフの関係が必ず存在します。
自動車を例にとって考えてみましょう。一般的に自動車のエンジンの性能を高めると燃費は悪くなり、四輪駆動にすると重量が上がるのではないでしょうか。 ユーザーは、いくつかある自動車の中から、トレードオフの関係にある要素に妥協点を見つけながら商品を選択します。そのときの選択では、さまざまな要素がありつつも、商品全体を評価した上で最終的な決定が下されます。
すなわち、コンジョイント分析ではユーザーがその商品を欲しいと思うかどうかの度合いを定量的に分析し、全体的に最もバランスのとれた商品が売れるという考え方がベースとなるのです。
コンジョイント分析で実現できることは多岐にわたる
まず、コンジョイント分析でわかることを整理すると、次の2点となります。
- ユーザーが重視する商品の特徴・コンセプト
- 自社と他社のスペック比較によるシミュレーション
2点目のシミュレーションでは、自社商品の価格やスペックの変更で、市場シェアにどういった変化が生まれるかの分析が可能です。 コンジョイント分析によりこの2点がわかると、以下にあげるようなさまざまな調査に利用できます。
- 新商品開発時の市場投入シミュレーション
- 製品リニューアル時の市場投入シミュレーション
- 自社の企業ブランドおよび商品ブランドの評価
- 商品プロモーションでの訴求ポイントの把握
- 適正価格や価格弾力性(価格変動による需給変化の度合い)の把握
いずれの調査も、適切に実施すればマーケティングに有利となるでしょう。また、商品開発だけでなく、投資判断にも役立つという点にも注目です。
たとえば、現時点では技術的に実現が難しいスペックの商品であっても、コンジョイント分析によって将来的に開発すべきかどうかが見極められるようになります。 特定の商品・サービスの市場に参入するか否か、または撤退するか否かを早い段階で判断できるのです。
コンジョイント分析のやり方
コンジョイント分析のやり方は、大きく分けて4つの手順にわけられます。 各手順についての詳細を順番に見ていきましょう。
1.直交表を用いて複数のコンジョイントカードを作成する
コンジョイントカードは、効果を測定したい属性と水準を設定して作成する仮想商品のプロファイルです。 たとえばテレビの場合、次のようなカードを作成します。
| 属性 | 水準 |
|---|---|
画面サイズ |
40インチ |
4K対応有無 |
あり |
価格 |
60,000円 |
| 属性 | 水準 |
|---|---|
画面サイズ |
32インチ |
4K対応有無 |
あり |
価格 |
40,000円 |
属性や水準の数が多いと正確な調査結果が得られにくいため、組み合わせはできるだけ少なく抑えるのがポイントです。 組み合わせを最小限に、かつ偏りなく設定するには、一般的に実験計画法における直交表を用います。
直交表とは、どの2列を取り出しても、その水準のすべての組合せが同数回ずつ現れるという性質を持った配列のことです。
コンジョイントカードの例に挙げたテレビについて考えると、「画面サイズ」が「32インチ or 40インチ」、「4K対応有無」が「ありorなし」、「価格」が「40,000円 or 60,000円」というバリエーションがあります。全部で2×2×2の8通りの組み合わせパターンです。 本来であればカードを8通り作成しますが、直交表を使用した場合、次のように表せます。
| No | A(画面サイズ) | B(4K対応有無) | C(価格) |
|---|---|---|---|
1 |
1 |
1 |
1 |
2 |
1 |
2 |
2 |
3 |
1 |
2 |
1 |
4 |
2 |
1 |
1 |
5 |
2 |
2 |
1 |
6 |
2 |
1 |
2 |
7 |
1 |
1 |
2 |
8 |
2 |
2 |
2 |
※水準は属性ごとにさまざま設定されますが、図表では“1”もしくは”2″で表します。 上記の表がすべての水準の組み合わせを表現したものです。続いて、ここから任意の2列を取り出します。
| No | A(画面サイズ) | B(4K対応有無) | C(価格) |
|---|---|---|---|
1 |
1 |
1 |
1 |
2 |
1 |
2 |
2 |
3 |
2 |
1 |
1 |
4 |
2 |
2 |
1 |
このように、本来調査が必要な組み合わせを直交表によって減らすと、効率の良い分析が可能です。
2.コンジョイントカードをもとにユーザーへアンケートを実施する
作成したコンジョイントカードは、アンケートによってユーザーに評価してもらいます。 いくつか提示されるカードの中で、欲しいと思う順位をつけてもらったり、直接的に欲しいと思う度合いや魅力度を聞いたりと、アンケート方式はさまざまです。 仮想的な商品を見てどれが良いかを点数付けまたは順位付けするため、ユーザー目線では実際の購入検討に近い状態となり、有効なデータを集められます。
3.アンケートの回答データをもとに属性・水準と効用値の関連を明らかにする
アンケートで取得した回答データから、各属性・水準がそれぞれ効用値(購入したい度合い)にどの程度影響しているかを分析します。 この分析には、「重回帰分析」を用います。
重回帰分析は、ひとつの成果(目的変数)に対して要因(説明変数)が複数あるとき、各要因がどれだけ成果に影響を与えているか分析する技法です。
コンジョイント分析では、効用値を成果、各属性・水準を要因と置き換えて分析を進めます。そして、重回帰分析において影響を与えている度合いを表す数値「回帰係数」を導出します。 実際に計算する場合、主に統計分析が可能なソフトウェアを使用するため、計算過程は割愛して以下に結果の例のみを挙げました。
| 属性 | 水準 | 回帰係数 | 係数の差 |
|---|---|---|---|
画面サイズ |
32インチ |
-0.4 |
0.8 |
40インチ |
0.4 |
||
4K対応有無 |
あり |
0.2 |
0.4 |
なし |
-0.2 |
||
価格 |
40,000円 |
0.75 |
1.5 |
60,000円 |
-0.75 |
得られた回帰係数は、コンジョイント分析においては「部分効用」と呼びます。 また、「欲しいと思う」水準の値はプラス、「欲しいと思わない」水準の値はマイナスです。両方の係数の差が大きいほどユーザーにとっての購入決定に大きく影響する属性であることがわかります。
4.部分効用を合計して評価の高い商品仕様を見つける
最後に、コンジョイントカードに設定した商品仕様について、各水準の部分効用値を足し合わせます。
| 商品A | 0.4(40インチ)+0.2(4K対応あり) -0.75(60,000円)= -1.25 |
|---|---|
| 商品B | -0.4(32インチ)+0.2(4K対応あり)+0.75(40,000円)=0.55 |